お金の話。クレジットカード誕生の歴史

最近、マネー、お金とはいったい何なのか?ということがしきりに気になり
いろいろ本を漁っている。せっかく読んだので自分用のメモ。

クレジットカードって1958年の実験で始まった結構新しい存在なんですね。
最近のお財布携帯などのいわゆる電子マネーとの違いやそもそもの仕組みも歴史的な経緯を見るとよくわかりました。面白い。


森元孝:「貨幣の社会学 経済社会学への招待」東信堂2007


○クレジットカードの誕生
クレジットカードは、各クレジット会社の会員になることで、そのカードの信用を頼りに、先延ばし払いの決済機能を使用することができる仕組みであり、電子マネーや電子財布など現金同様の決済機能をもつものとは異なるものである。
歴史的には、1958年バンクオブアメリカカリフォルニア州フレズノの人々に突然6万枚のクレジットカードを送り付け、この仕組みを根付かせようとしたのが始まり。それ以降、無差別にカードを郵送することが違法とされるまでの12年間に、全米で一億枚にのぼる各種クレジットカードが郵送配布されたという。
バンクオブアメリカは1904年創立、1980年代まで全米最大の銀行だったが、中流向け預金サービスの重視が特徴の銀行だ。それはこの銀行がサンフランシスコ周辺のイタリア系移民農民への資金提供を目的としたバンクオブイタリアから始まっているからである。
1950年代アメリカの大衆消費の時代、ローン・分割払いが成長していくが、その消費者向け小額貸付にかかる煩雑な手間の処理に比して利益は少なくなってしまうというリスクが発生していた。これを商品化したのがクレジットカードであり、カード保有者に500ドルほどの信用枠を設定し、そのカードに加盟した店で商品購入した際、加盟店にその購入額の6%を手数料として徴収するが、それまで加盟店が事務員を雇い各種小額処理のために経理機器をたたきながら請求書作成送付させえちた煩瑣な作業を代行する仕組みを提供するというサービスである。
当時のフレズノは人口25万人、住民の45%がバンクオブアメリカとなんらかの取引があり、比較的孤立した町であった。


○ゲゼル
「減価する貨幣」を提案したゲゼルは、第1次世界大戦後まもなくロシア革命の影響を受けて生まれるドイツ、バイエルンのソヴィエト自治政府財務大臣に任命されたが、この革命政府は1週間ほどで鎮圧されたため、実際にそこで彼の理論が実践されることはなかった。

○ヴェルグルの実験
1932-33年にかけて、オーストリアのチロル州ヴェルグルにおいて、ゲゼルの理論に学び、その後しばしば地域通貨の原型とされる「減価する貨幣」の実践が行われ、それなりに有効であった。

ケインズのゲゼル評価
ゲゼルを高く評価しつつもケインズは紙幣にマイナスの利子率を付与した場合、それがいつまでも貨幣として一般交換可能性を維持しつつけられるかは疑問だとした。ゲゼルの紙幣の流動性よりも高いものが現われる可能性はいつもあるので、人々はそちらの商品(貴金属や外国通貨など)にいずれは乗り換えてしまうだろう。つまり、ヴェルグルの実験のように戦後の最悪の経済という特異な状況下で「労働証明書」が唯一の貨幣として一時的に機能できたとみるべきだろう。