塩野七生vs司馬遼太郎

毎日新聞2006.12.17日曜版より
...司馬は戦国大名でも,幕末の志士でも,もっぱら,権力を得ようとする者たちを描いた。権力奪取後の領国経営や国家の運営については,あまり関心を抱いていない。源頼朝徳川家光伊藤博文山県有朋らの生涯を描くのに熱心でなかったことにもそれは表れている。権力者がいかに統治したかを詳述する塩野さんと対照的だ。
このことを塩野さんにぶつけると,興味深い答えが返ってきた。司馬のモンゴル好きは有名だが,元は中国を制覇した後,100年もたなかった。権力に固執せず,草原へ帰っていくモンゴル民族を司馬は肯定的に描く。塩野さんはこれに対して「あれは統治できなくなったんだと思う」と指摘したのだ。