本日の言葉「悟り」

たとえば「解脱」という概念がある。非常におおざっぱに「この世のあらゆる苦しみから自由になること」「絶対に安全になること」ととりあえず解しておこう。これを仏教的、というと不正確なのだろう。仏教の本来の教え、おそらくは仏陀が考えていたこと、説こうとしたことはむしろこの「解脱」などということはできない、ということであり、いわゆる「悟り」とは「解脱」の反対概念、「解脱」の不可能性を知ること、である。となると「解脱」を目指して修行することはまさに「偽の神に帰依すること」に他ならない。

稲葉振一郎『オタクの遺伝子』太田出版