2007年のマイベスト本

あけましておめでとうございます。
今年はぜひともScalaおよび関数型言語の日本における実践元年にしたいものです。

昨年出版され読んだ本の中から勝手にベスト3を発表。
●まずは一般書に関してのベスト3。


1.生物と無生物のあいだ
  福岡伸一 講談社現代新書

科学の分野でこれほどの知性が登場したことは2007年の快挙。
生命というものと科学という営みとが、ともに動的プロセスとしてミステリー仕立てで
圧倒的な筆力で提示されている。「あとがき」はがまんして最後に読むことをお勧めする。
プリオン説はほんとうか?―タンパク質病原体説をめぐるミステリー』 ブルーバックス
とともに読みましょう。


2.国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて
  佐藤優 新潮文庫(いちおう文庫としては新刊ということで)

日本の外務省にこれほどの哲人=鉄人がいたのかと圧倒される。冤罪のこの事件で外交官として仕事ができなくなったことが世界にとって良かったのか悪かったのか。これだけの知性と筆力をもった人材が登場したことは
一般読者からすれば稀有なる僥倖ということになろう。


3.古事記の起源 新しい古代像を求めて
  工藤隆 中公新書

古事記を歌垣の世界(中国雲南ではきわどくまだ残っている)と結びつけることが、文化人類学的なフィールドワークとテキストクリティークの融合という新たなプロセスを用いることで可能なのだということが新鮮な衝撃である。古事記序が偽書だとする三浦 佑之「古事記のひみつ―歴史書の成立」(吉川弘文館)「古事記講義」 (文春文庫) とともに大きな収穫である。


番外:沢田マンション超一級資料 世界最強のセルフビルド建築探訪
  加賀谷哲郎 築地書館

建築の関係者もソフトウェアの関係者もそうでない一般読書人も騙されたと思って読むべし。こんなパワフルな日本人が高知に居た。基礎工事からクレーンの組み立て、5階建てマンション、住居人に応じたダイナミックkな間取りの変更、屋上水田、各階を地上の快適さにする発想としてマンションへのらせん道路の巻きつけ、そして彼の建てたマンションはまだ進化している!


●次にソフトウェア関連の分野でのベスト3。


1.実践UML 第3版 オブジェクト指向分析設計と反復型開発入門
  クレーグ・ラーマン 依田光江訳 ピアソンエデュケーション

このラーマンさんの名著も第3版になりRUPとアジャイルデザインパターンと設計原則、そしてプロセスの視点がかなりパワーアップ。もうオブジェクト指向開発技法の古典テキストといってよいでしょう。
前の版を持ってない人も持っている人もじっくり読む価値有り。


2.プログラミングin OCaml 関数型プログラミングの基礎からGUI構築まで
  五十嵐淳 技術評論社

Scalaを勉強するにも関数型言語を基礎から勉強するにもまずはOCaml知っておくと学びやすいと思います。
ソフトウェアサイエンスの基本にもとづいた非常に実践的で丁寧な入門書としてお勧め!


3.イノベーション 悪意なき嘘
  名和小太郎 岩波書店

ソフトウェアの分野における大先輩である著者からのかなり辛らつな視点だが、非常に参考になる。


番外:ゲーデルと20世紀の論理学(ロジック)
 〈1〉ゲーデルの20世紀 〈2〉完全性定理とモデル理論
 〈3〉不完全性定理と算術の体系 〈4〉集合論プラトニズム
  田中一之 編 東京大学出版会

日本の専門書出版における2007年度の快挙!数学の哲学に関するこうした充実した内容が
日本語で読めるのがうれしい。「不完全性定理」クルト・ゲーデル 林晋&八杉満利子 訳 岩波文庫
の林解説とともに私のような素人にも楽しく読める部分がうれしい。